職場で誰よりも近くで、その人の変化に気づけるのは、上司ではなく同僚であることも少なくありません。毎日顔を合わせ、何気ない会話を交わすからこそ、「いつもと違う」が目に入くことがあります。
ただ、いざ声をかけようと思うと、「踏み込みすぎでは」「余計なことをしてしまわないだろうか」と迷うものです。厚生労働省「こころの耳」でも、不調のサインに気づいたら声をかけ、話を聴いてみること、そして心配であればひとりで抱えずに周囲や専門職と連携することが大切だと示されています。 Source Source
今回は、上司ではなく「同僚」として、どのように関わればよいのかを整理します。
1.同僚だからこ気づける「いつもと違う」がある
上司には上司の見方がありますが、同僚には同僚にしか見えないものがあります。
たとえば、次のような変化は、日頃一緒に仕事をする同僚だからこ気づけるものです。
- いつもは雑談に加わる人が、急に黙って距離を置くようになった
- ランチを一緒にとっていた人が、一人で食事を済ませるようになった
- 元気な挨拶を返してくれていた人が、うつむきがちになった
- 冗談を言い合っていた関係が、急にぎこちなくなった
- 休みがちになった、遅刻が増えた、体調不良を理由に早退することが増えた
- 仕事のミスや抜れが、以前より増えたように感じる
こうした変化は、一つだけでは判断できません。ただ、「その人らしくない」と感じることが続いているなら、それは何か負担がかかっているサインかもしれません。
「こころの耳」の同僚向け情報でも、日頃からの声かけや、相手の変化への気配りが大切だとされています。 Source
2.まずは「声をかける」こと。それだけで十分
同僚としてできることの第一歩は、特別なことではありません。
声をかけることです。
たとえば、こんな一言でよいのです。
- 「最近、疲れて見えるけど、大丈夫?」
- 「いつもより元気がないように見えたから、気になって」
- 「何かあったら、話だけでも聞くよ」
- 「無理してない? 最近ちょっと心配してた」
大切なのは、問い詰めることではなく、気にかけていることを伝えることです。
この一言で、相手は「誰かが見ていてくれた」と感じられます。
逆に、誰も声をかけない職場では、不調の人は「気づかれていない」と感じ、さらに孤立してしまいます。
声をかけることは、踏み込みすぎではありません。
職場で孤立させないための、最低限の関わりです。
3.「どうしたの?」と聞くより、「話せるよ」と伝える
声をかけるとき、つい「どうしたの?」と原因を聞きたくなります。
ですが、原因を直接聞かれると、相手は「話さなければ」と構えてしまうことがあります。
それよりも、
「話したくなったら、聞くよ」
という姿勢のほうが、相手は安心します。
たとえば、
- 「話せる範囲でいいから、何かあったら聞くよ」
- 「今は話したくないなら、それでいいから」
- 「大丈夫じゃないときも、言っていいんだよ」
こうした言葉は、相手に選択肢を残します。
「話す/話さない」を相手が決められる状態を作ることが、同僚としてできることです。
無理に聞き出そうとするのではなく、話したくなったときに話せる関係を作っておく。
それが、同僚にできる大切な関わりです。
4.話を聴くときは「解決」より「受け止める」ことを優先
同僚から悩みを打ち明けられたとき、つい「何とかしてあげたい」と助言したくなるものです。
ですが、同僚の立場で最も大切なのは、解決することではなく、受け止めることです。
たとえば、避けたいのは、
- 「それはこうしたらいいよ」とすぐ解決策を出す
- 「考えすぎだよ」と軽く流す
- 「みんな大変だから」と一般論で返す
- 「頑張ろう」と励ましで締めくくる
こうした反応は、励ましているつもりでも、相手には「わかってもらえなかった」と伝わることがあります。
それよりも、
- 「そうだったんだ」
- 「ずっとつらかったんだね」
- 「よく話してくれたね」
と、まず受け止めることが大切です。
同僚にできるのは、専門的な解決ではありません。
「この人は話してよかった」と思ってもらえる場を作ることです。 Source
5.「同僚」の範囲を超えたら、ひとりで抱えずつなぐ
同僚としてできることには、限界があります。
これは、冷たい話ではなく、むしろ相手を守るために大切なことです。
次のような状態が見えたら、同僚だけで抱え込まず、誰かにつなぐことを考えましょう。
- 出勤そのものがつらそうで、休みがちになっている
- 眠れていない、食べられていない様子が続いている
- 涙ぐむ、動悸や吐き気など身体症状が見られる
- 仕事の遂行が明らかに難しくなっている
- 「消えたい」「いなくなりたい」といった言葉が聞かれた
こうした場合は、同僚の対応の範囲を超えています。
「こころの耳」でも、心配であればひとりで抱えず、周囲に相談し、人事や産業保健スタッフ、主治医などと連携して対応することが大切だとされています。 Source
つなぐ先としては、
- 上司
- 人事
- 産業医・保健師
- 相談窓口
などがあります。
同僚にできることは、すべてを解決することではなく、必要な支援に気づき、つなぐことでもあります。
6.「声をかけたのに、何も変わらなかった」で終わらせない
同僚として声をかけても、相手がすぐに話してくれるとは限りません。
「大丈夫です」と返ってくることも、多いものです。
大切なのは、その一言で終わらせないことです。
一度声をかけたら、それで役割が終わったわけではありません。
- 数日後にもう一度、「その後どう?」と聞く
- ランチや休憩に自然に誘う
- 仕事の負担をさりげなく気にかける
- 変化が続くなら、上司や専門職につなぐ
「大丈夫」という返事を、そのまま受け取るのではなく、その後も気にし続けることが、同僚としての関わりを支えます。
7.あなた自身を守ることも、大切なこと
同僚の不調に寄り添うことは、ときに大きな負担を伴います。
相手のつらさを引き受けるように感じて、自分まで疲れてしまうこともあります。
だからこそ、同僚として関わるときは、次のことも忘れないでほしいと思います。
- すべてを自分が解決しようとしない
- 相手の状態を、ひとりで抱え込まない
- 心配なときは、自分も誰かに相談してよい
- 無理に「救おう」としない
同僚としてできることは、相手の人生を背負うことではありません。
気づき、声をかけ、必要な支援につなぐことです。
あなたが無理をしすぎると、長く関われなくなってしまいます。
相手を支えるためには、あなた自身の無理も避けることが大切です。
まとめ
同僚の「いつもと違う」に気づいたとき、あなたにできることは特別なことではありません。
- 声をかける
- 話せるよ、と伝える
- 話を聞くときは受け止める
- 同僚の範囲を超えたら、ひとりで抱えずつなぐ
- 一度で終わらせず、気にし続ける
- あなた自身も無理をしない
上司ではなく同僚だからこそ、気づけることがあります。
そして、同僚だからこそ、気軽に声をかけられることがあります。
「何かあったら、聞くよ」
その一言が、誰かの孤立を防ぐ最初の一歩になることがあります。
あなたの何気ない声かけが、
職場でひとりで抱えている人を、そっと支えているのかもしれません。

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