職場の悩みに、答えと安心を。
20年以上の経験を持つ産業医
Dr.Nanakoをフォローする
職場の悩みに、答えと安心を
働く人には安心を。 管理職には自信を。 企業には、誰もひとりで抱え込まない職場づくりを。 20年以上、企業の現場で働く人と向き合ってきた産業医が、「今、困っている」に寄り添い、明日から実践できるメンタルヘルスを届けます。

再休職を防ぐ職場の仕組み。復職後のフォロー設計

復職した社員が、数か月後に再び休職する。
これは、本人の努力不足でも、上司の対応ミスでもありません。多くの場合、復職後のフォローが「個人の善意」に依存していて、仕組みになっていないことが原因です。

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」でも、職場復帰支援は復職後のフォローアップまでを含む5ステップのプロセスとされ、フォローアップでは症状の再燃・再発についての早期の気づきと迅速な対応が不可欠だとされています。 Source Source

今回は、再休職を防ぐために、会社側が仕組みとして整えるべきフォロー設計を整理します。前回の記事の「休職者が発生したとき、会社として最初に整える3つのこと」が「入り口」の設計だとすれば、本記事は「出口から定着まで」の設計です。


なぜ、再休職が起きるのか

まず、再休職が起きる典型的なパターンを押さえておきます。

  • 復職後すぐに元の業務量に戻す:回復途上に負荷がかかり、再発します。
  • フォローが不定期・属人的:担当者の善意に依存し、忙しくなると消えます。
  • 復職後の見守りが「様子見」で終わる:変化を拾う仕組みがありません。
  • 判断が一人に集中する:上司が抱え込み、対応が遅れます。
  • 記録が残らない:担当者が替わると、経緯が引き継がれません。

逆に言えば、これらをつぶすだけで、再休職のリスクは大きく下がります。以下、設計項目ごとに見ていきます。


設計1:フォローアップ面談を「仕組み」にする

再休職防止の中心は、復職後のフォローアップ面談です。

一般的には、復職後のフォローアップ面談は1か月に1回程度のペースで産業医が実施し、各回で次のような点を確認します。 Source

  • 体調の経過(睡眠・食欲・気分・集中力など)
  • 業務の状況と負荷
  • 困っていることの有無
  • 配慮内容の適合性

さらに、復職後1か月・3か月・6か月の節目に、人事労務担当者や産業医による面談を行い、体調の変化や業務への適応状況を継続的に確認する、という設計も有効とされています。 Source

仕組み化のポイントは、頻度と期間をあらかじめ決めておくことです。
「必要に応じて」ではなく、「復職後1か月は月1回以上、その後は3か月・6か月の節目に」という形で、カレンダーに落とし込める設計にします。とくに最初の1か月は複数回の確認機会を入れておくと、再不調の兆候を早く拾えます。 Source

復職支援がうまくいく会社、こじれる会社の違い


設計2:業務量の戻し方を「ルール」にする

フォロー面談と並んで重要なのが、業務量の段階的な戻し方です。

厚生労働省の手引きでは、復職後の就業上の配慮として、復職当初は時間外労働や夜勤・車両の運転などを制限し、軽減業務とし、管理監督者が配慮することが示されています。 Source

これを仕組みにするには、戻し方のルールをあらかじめ決めておくのがポイントです。たとえば、残業の解禁を段階的に行う設計が例として挙げられています。 Source

時期業務量の目安(例)
復職1か月目残業なしを継続。体調を確認
復職2か月目問題なければ残業を小幅に解禁
復職3か月目以降段階的に上限を拡大

ここで大切なのは、「本人の希望」だけで戻さないことです。「大丈夫です」という返事は、遠慮や責任感から出ることが少なくありません。ルールとして上限を決めておけば、本人も上司も判断に迷いません。

なお、こうした配慮は業務の調整として設計するのがコツです。個人の特別扱いにすると周囲の不公平感を生みますが、「しばらくこの業務はこう分担する」という業務の話にすれば、現場も受け入れやすくなります。


設計3:判断を分業し、記録に残す

再休職防止の仕組みで、見落とされやすいのが分業と記録です。

復職後のフォローでは、次のような判断が発生します。

  • 体調が悪化したとき、業務をどう調整するか
  • 再度休養が必要かどうか
  • 配慮内容を見直す必要があるか

これらを上司ひとりが判断するのは危険です。役割を分けておきます。

判断の種類主に担う立場
業務量・配置の調整上司・人事
健康面からの就業可否・配慮産業医
治療方針・医学的判断主治医
職場と医療機関の調整両立支援コーディネーター

両立支援コーディネーターは、独立行政法人労働者健康安全機構が養成し、本人を中心に医療機関と職場の間で情報提供と調整を担う役割です。 Source

そして、フォロー面談の記録・配慮内容・業務調整の経緯を残しておくこと。これがあると、担当者が替わっても対応が継続し、判断の属人化を防げます。手引きが求める「早期の気づきと迅速な対応」は、記録があって初めて機能します。 Source

部下の治療と仕事の両立を支える。上司の役割とは


設計4:管理職と同僚に、復職の受け入れ方を還元する

再休職を防ぐには、フォロー体制だけでなく、現場の受け入れ方も設計に含める必要があります。

とくに、職場復帰者を迎え入れる同僚向けの情報は、厚生労働省「こころの耳」の研修シリーズでも提供されています。 Source

現場に還元したいのは、次のようなことです。

  • 復職者にどう接するか(腫れ物扱いをしない)
  • 業務分担をどう組み替えるか
  • 何を聞いてよく、何を聞かなくてよいか
  • 本人の同意なく病名を共有しないこと

とくに情報管理は重要です。本人の同意なく、他のメンバーや同僚に病名を漏らすことは避け、共有する場合も「誰に・どこまで」を事前に決めておきます。 Source

管理職向けには、復職後1か月の関わり方を具体的に示しておくと、現場が動きやすくなります。

部下が復職する。最初の1か月で上司が気をつけること


設計5:制度とデータで、仕組みを更新する

ここまでを「仕組み」として定着させるには、制度とデータの両輪が要ります。

制度面の前提

  • 治療と仕事の両立支援は、改正労働施策総合推進法により2026年4月1日から事業主の努力義務となりました。対象は規模を問わずすべての企業です。 Source Source
  • 障害のある方への合理的配慮の提供は、2024年4月1日から事業者にも義務化されています。 Source

復職後の配慮は、これらの枠組みと整合させておく必要があります。

押さえておきたい助成金

治療と仕事の両立支援に関しては、両立支援等助成金の枠組みが用意されています。 Source
なお、コースごとの支給額・要件は年度ごとに見直され、公表資料によって記載が異なるため、具体的な金額・要件は申請年度の最新の厚生労働省資料で要確認としてください。ここでは金額を断定しません。

データで見る

復職率、復職後の再休職率、フォロー面談の実施率、復職後3か月・6か月の定着率——こうした数値を追うことで、仕組みが機能しているかを確認できます。仕組みは作って終わりではなく、数値で検証して更新するものです。

なお、50人未満の事業場ではストレスチェックが2028年4月1日から義務化される方針が示されており、一次予防の仕組みづくりも並行して進める必要があります。 Source Source

中小企業のメンタルヘルス対策、何から始める?基本設計を解説

ストレスチェックを実施だけで終わらせない会社の活かし方


まとめ:再休職を防ぐ5つの設計

再休職を防ぐ職場の仕組みは、次の5つに整理できます。

  1. フォローアップ面談の仕組み化:頻度と期間を決め、カレンダーに落とす
  2. 業務量の戻し方のルール化:段階的に戻す設計をあらかじめ決める
  3. 判断の分業と記録:上司・人事・産業医・コーディネーターで分担し、記録を残す
  4. 管理職・同僚への還元:受け入れ方と情報管理を現場に伝える
  5. 制度とデータでの更新:法的枠組みと整合させ、数値で検証する

復職は、本人の回復の証ではありますが、ゴールではありません。
再休職を防ぐのは、本人の頑張りではなく、職場の仕組みです。

「あの人が戻ってきてよかった」と現場が思えるかどうかは、復職後の数か月の設計にかかっています。仕組みを整えることは、休職者を一人の例外として扱わず、職場として受け止める体制をつくることでもあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました