部下から「休みたい」と打ち明けられた瞬間、上司は少なからず動揺します。
「本当に休ませるべきか」「他のメンバーにどう説明するか」「自分が何かしたからではないか」——頭の中で考えることが一気に増える場面です。
ですが、この最初の対応で、その後の復職までが大きく変わります。厚生労働省の指針でも、管理監督者は日常的に部下からの自発的な相談に対応するよう努めることが示されており、上司は対応のキーパーソンになりやすい立場です。 Source
今回は、部下が「休みたい」と打ち明けてきたとき、上司が最初に確認したいことを整理します。
1.まず受け止める。「その場で決めなくていい」と知っておく
最初に断っておきたいのは、上司はその場で休職の可否を判断しなくてよい、ということです。
「休みたい」と言われた瞬間に、
- 「そんなことできるわけがない」と打ち消す
- 「なぜ?」「原因は何?」と問い詰める
- 「あと1か月頑張ってみたら」と引き延ばす
という反応をしてしまうと、部下は「もう話しても無駄だ」と口を閉ざします。
最初にすべきことは、決断ではなく、受け止めることです。
たとえば、
- 「話してくれてありがとう」
- 「よく話してくれたね」
- 「状況を確認させてほしい」
この一言があるだけで、その後のやりとりが変わります。
上司は医師でも裁判官でもありません。今すぐ結論を出す必要はありません。まずは「ひとりで抱えていたことを打ち明けてくれた」という事実を受け止めるところから始めます。
2.確認すること1:「今、安全に働ける状態か」
受け止めたうえで、最初に確認したいのはこれです。
結論がどうあれ、まずは今の状態で安全に働けるのかを確認します。
ここで見たいのは、単に「しんどいかどうか」ではありません。たとえば、
- 出勤や業務に支障が出ているか
- 睡眠や食事が取れているか
- 仕事中のミスや判断の低下がないか
- 通院しているか、していないなら受診の必要性はありそうか
です。 Source
本人が「まだ大丈夫」と言っても、客観的に見て危うい状態であることはあります。
ここでの目的は診断ではありません。
今の勤務を続けることで悪化しないか
という観点で、事実を確認することです。
3.確認すること2:「休みたい理由」ではなく「困っていること」
部下が「休みたい」と言うとき、その背景はさまざまです。
- 仕事の負荷が限界
- 人間関係のつらさ
- 家庭や私生活の問題
- 通院や治療との両立
- 環境を整えれば働き続けられる可能性がある
ここで上司が知りたいのは、原因そのものより、仕事のどこに困っているかです。
「休みたい理由」を根掘り葉掘り聞く必要はありません。
むしろ、私生活の細部を聞き出そうとすると、部下は警戒します。
確認したいのは、
- どの業務が負担になっているか
- どのあたりからつらさが強くなったか
- どんな調整があれば、続けられる可能性があるか
この3点です。
原因を追及するより、困りごとを整理する。ここが上司の役割です。
4.確認すること3:「いつから」「どのくらい」の見通し
次に確認したいのは、時期と見通しです。
- いつごろから不調を感じているか
- 通院しているか、医師からどう言われているか
- どのくらいの期間がかかりそうか
ここで気をつけたいのは、上司が医師の判断の代わりをしないことです。休職の必要性や期間は、本来、医師の判断が基になります。 Source
上司は「あなたは何日休むべき」と決めるのではなく、 会社の制度上、どんな選択肢があるか を伝える役割を担います。
- 有給休暇で数日休む
- 業務量を調整して続ける
- 休職制度を使う
- まずは受診する
といった選択肢を並べて伝えると、部下は自分で考えやすくなります。
なお、会社が休職を判断する際に主治医の診断書を必要とする場合は、それを本人に伝えることになります。診断書は現場で開けるなどせず、人事や産業保健スタッフを通じて適切に扱うという基本も、あわせて押さえておきたいところです。 Source Source
5.やってはいけない対応を、あらためて確認する
休職をめぐる対応で「やってはいけない」とされているものは、はっきりしています。
- 休ませないこと。すでに限界にある部下を、引き続き働かせる
- 引継ぎのために、何日か出社してもらうこと。回復を妨げます
- 診断書を現場で勝手に読むなど、取り扱いを軽くすること
- 本人の同意なく、内容や病名を職場に共有すること
- 「気合いで何とかなる」と言い、不調そのものを軽視すること
特に最初の2つは、「会社の都合」が前面に出やすい対応です。
厚生労働省の両立支援や復職支援の考え方でも、本人の状態に配慮した対応が基本になります。 Source Source
厳しいことを言う上司ほど、「甘やかしてはいけない」と考えがちです。ただ、休職対応で「甘やかし」という概念は当てはまりません。必要なら休ませ、必要なら調整する。それだけです。
6.上司ひとりで答えを出そうとしない
ここが、最も大切なポイントです。
部下の休職希望への対応は、上司ひとりで完結させてはいけません。
これは能力の問題ではなく、役割分担の問題です。
関わるべき相手は、立場ごとに役割が異なります。
- 上司:日常の変化に気づき、業務の事実を伝える
- 人事:制度の運用、休職・復職の手続きを行う
- 産業医:健康面から就業可否や配慮事項を意見する
- 主治医:治療方針や医学的な判断を示す
たとえば、休職の必要性や就業上の配慮は、上司ではなく産業医や人事を通して整理されるべきものです。 Source 上司だけでなく、人事や産業医を含めた分業対応が、再発防止にも有効だとされています。 Source
「自分が何とかしなければ」と思うほど、上司は抱え込みます。
でも、上司の役割は適切な支援につなぐことです。つなぐことは、逃げることではありません。
7.あなた自身が元気でいることも、部下の支援になる
最後に、見落とされがちなことをお伝えします。
部下の「休みたい」を受けた上司は、少なからず責任を感じます。
「自分の関わり方が悪かったのではないか」「他のメンバーにどう説明すればいいのか」「またこういうことが起きたらどうしよう」——こうした思いを抱え、上司自身が疲弊していくことがあります。
ですが、上司が追い詰められては、その後の復職支援も続きません。
上司自身が、人事や産業医、時には外部の相談先を使うことは、部下を支えるための条件でもあります。
「自分がもっと早く気づいていれば」と後悔する必要はありません。
今、話を聴き、事実を確認し、適切な支援につなぐ。
それができているなら、上司として十分に役割を果たしています。
まとめ:最初に確認したいこと
部下が「休みたい」と打ち明けてきたとき、上司が最初に確認したいのは次のことです。
- 受け止める:その場で結論を出さず、話してくれたことをまず受け取る
- 安全に働けるか:今の状態で勤務を続けて悪化しないかを確認する
- 困りごと:理由の追及ではなく、仕事のどこにつらさがあるか
- 時期と見通し:いつからか、通院の状況、制度上の選択肢
- やってはいけない対応を避ける:休ませない、引継ぎで出社させる、診断書を軽く扱う
- ひとりで抱えない:人事・産業医・主治医につなぐ
「休みたい」という申し出は、部下にとって、大きな勇気がいる一言です。
その一言が出た時点で、すでに限界に近い状態であることも少なくありません。
上司に求められるのは、正しい判断を即座に下すことではありません。
受け止め、確認し、適切な支援につなぐことです。
その最初の対応が、部下が回復して戻ってくる道を、静かに支えています。

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